いつも貴方と一緒だった。
 怒られることの方が多かったけど、嫌じゃなかったわ。
 だって、あたしを見てくれてる証拠だったから。

 ―――ねぇ、ネス。

 貴方は今もあたしを見てくれてる?


 ざぁ…と涼やかな風が髪を揺らす。
 トリスは大きな樹の目の前に座っていた。

 ――…ネスティの、眠る場所に。

「…でね、今日も目覚まし使わないで起きたのよ」
 笑って目の前の樹に向かって続けた。
「すごいでしょ?起きる時間も前より全然早いの。バルレルが毎朝びっくりしてるわ」
 あはは、と笑う。
「…破れたマントもあたしが縫ってるのよ?…もう少し、かかりそうなんだけど」
 持って来ていたネスティのマントを広げる。真っ赤なマントは所々破れている。
「…あたしは大丈夫だから」
 静かに笑って。
「…ゆっくり休んでね」
 そう言って、幹に触れた。

『――――何だ』

 唐突に、声がした。
 いつの間にか目の前にいたのは、ずっと会いたかった人。
    ネス……。
 眉をひそめて、こちらを見ている。
『…トリス』
 ネスティは呆れたように溜息をつくと、トリスの頭を撫でた。

 久しぶりの感触に、胸が、熱くなった。

『…言いたいことがあるなら言えばいいだろう』
 ふっと慈しむような、優しい表情で。
 あたしの、大好きな顔で。

『何年、君の兄弟子をしてると思っているんだ』
 聞いたことのある言葉だった。
 あたしの頭をよしよしと不器用に撫でて。
『そんな顔をして、僕に嘘がつけると思っていたのか?』
    ―――あぁ、そうだ。これはあたしが派閥にいた頃の…。

『大丈夫だ。…僕はずっと―――…』

「…!」
 はっと目を開ける。
「…夢…」
 いつの間にか寝ていたらしい。持っていたマントに目を向ける。
 …昔から、何か言いたい時は決まってネスにバレてたんだっけ…。
「…うそ…つき…」
 小さく、声が響く。頬を冷たい雫が伝う。
「…ネスの…嘘つき…ッ」
 約束したのに。あの時。
「約束…したじゃない…」
 お願い。お願い、だから。

『…僕はずっと―――…』

「帰って…来てよ……ッ…!」


『…僕はずっと、君の隣りにいるから』






  第3話は再びトリスです。
  トリスは毎日ネスの所に行ってるんじゃないかと思います。他愛のない話とかしてたり。
  ネスが夢に出て来たら、もう悲しくて一人で泣いてると思う。

  ここまで読んで下さってありがとうございました。
  2007.06.07