神様。
 どうか、どうか。

 彼を返して。

 あの日から、ずっと願ってる。


 目を覚ましたトリスは横に置いてある時計を見た。
  ・・
 …また、セットした時間より早く起きてしまった。
「………全然使わないなぁ」
 くすっと笑う。最後にこの目覚ましの音を聞いたのはいつだっただろう。

『……で寝てるんだ』
 思い出そうとしても、脳裏を過るのは溜息混じりのあの声だけ。

「…リス。トリス!」
 誰かに呼ばれて、遠のきかけた意識が戻る。
 声の方に目を向けると、背の低い悪魔が不機嫌そうに立っていた。
 その表情に困ったように笑う。
「…バルレル?入る時はノックをしてってあれほど言ってるでしょ?」
「何度もした!返事をしなかったのはお前だ」
「そうなの?…全然気付かなかったわ、ごめん」
 苦笑しながら、悪魔――バルレルに頭を下げる。
「…そういえば、最近やけに起きるのが早いわね?バルレル」
「…こんな人間臭いとこじゃ、気持ち良く眠れねぇんだよ」

 トリスの問いに、…小さな嘘を織り交ぜて返した。
「――そう」
 薄く笑って布団から出るトリスを見て、バルレルは少し眉をひそめた。
「…もう起きるのか」
 まだ朝日が出たばかりだ。
「目が冴えちゃったから」
 そう言って笑うトリスに気付かれないように舌打ちをする。
 …また、『いつもの』理由かよ。
「それはそうと、バルレル?」
「あ"?」
「あたし着替えたいんだけど?」
 覗く気?
 にっこりと笑うトリスを睨んで。
「…んな訳ねぇだろ!!!」
 思いきり扉を閉めて出て行った護衛獣を見遣って、くすくす笑ってパジャマを脱いだ。


「おはよう、トリス。早いですね」
「アメル」
 台所に行くと、アメルが朝食の支度に取り掛かっていた。
 朝食の担当は、満場一致でアメルに決まっている。ちなみに夕飯は当番制だ。
「おはよう。今日の朝ご飯はスープ?」
「えぇ。栄養たっぷりのお芋が沢山入ってるのよ」
「そ、そうなの…。それじゃ、あたしは食器の準備でもするわね」
 食器棚から人数分の食器を取り出して、テーブルに並べる。

「…トリス」
「?何?アメル」
 アメルは少し申し訳なさそうに続けた。トリスの、手元を見ながら。
「…食器、一組多いです」
「……あ。そう、だったわね」
 自分の席の隣りに置いていた食器を見遣った。
「…ダメだね、あたし。また間違えちゃって」
「トリス…」

「ネスはまだ、帰って来てないのに」

 いつも、いつも。
 あたしの隣りにいてくれた、人。


 ―――今はもういない。あたしの大切な人。






  初の連載ものです。ど、どこをどうしたらこうなったのか…(オロオロ)
  ネスED見て、トリスは周りに明るく接してるけど、辛いんだろうなぁとか考えてたら微妙にシリアスに(笑)
  もう他のサイト様とかこういう話あると思うんですが、書いてみたかったので。ネタが被っていたらすいません(土下座)

  ここまで読んで下さってありがとうございました。
  2008.01.16 修正・加筆