今も時々、夢に見る。
背筋が凍り付くような、あの日のことを。

「ねぇ、何読んでるの?」
「……」
「ねぇってば」
「……」
「……」
「……」
「……………ネスのバカ」
「バカは君だ、トリス」
今まで無言だったネスティは、はぁ…と溜息をついた。
トリスが彼に呼びかけ始め、ようやく5分が過ぎた頃だった。
「…聞こえてたの」
結構小声で言ったつもりなんだけど。
「……はぁ…当たり前だろう」
その言葉に再び溜息を落として。
「君がこんな所にいるんだ。嫌でも聞こえる」
『こんな所』というのは、ネスティの部屋という意味ではなく。
「何故、僕の背中に乗っているんだ」
今、トリスがいるのは彼の背中。
つまり、ネスティに後ろから抱きつくような格好になっているのだ。
「ん〜…」
「…?」
少し考え込むようなトリスの態度に首を傾げたネスティは、はっとして手元の本から視線を上げた。
「また何かしでかしたのか!」
「むぅ…違うわよ」
その言葉に安堵するが、それならますます納得がいかない。
「?なら何だ?」
「……」
その問いの返事は返って来ず、代わりにネスティの背中に回された手にぎゅっと力が入った。
…あぁ、そういえば。
昔もこういうことが何度かあった。確か、トリスが派閥に来たばかりの時期だ。
何度も傷だらけのトリスが必ず僕の元へ来て、ぎゅっと抱きついて来た。
傷の原因を聞いても何も言わず、ただぎゅっと。
その傷が…フィリップや同級生に殴られて出来た傷なのだと、だいぶ後になって知った。
トリスは弱音を言おうとしない。
誰にも。
自分だけで抱え込もうとする。
そして、それは。
昔も今も同じで。
「……」
頑なに離れようとしないトリスを一瞥して、読んでいた本を閉じた。
肩に凭れているトリスの頭を優しく撫でてやる。
昔も、今も。
僕は君の頭を撫でることしか出来なかった。
「…どうしたんだ?トリス?」
「………ねぇ、ネス…」
「ん?」
「もう…何処にも行かないでね…?」
「!」
「もう…いなくなっちゃ…やだよ…」
微かに震えた声で。消え入りそうな、小さな声で。
ぽつり、と。そう言った。
――…あぁ、そうか。君は。
「…あぁ、約束するよトリス。二度と、君を置いて何処にも行かない」
「っ…絶対…?」
「絶対だ」
トリスを向かい合うように椅子を回し、彼女を腕の中に引き寄せる。
そして、ぎゅうと強く抱き締めた。
「…うん…」
時々、夢に見るの。
貴方を失った、あの日を。
どんなに走っても、貴方には追いつけなくて。
背筋が凍り付いて、泣き叫ぶ所で決まって目が覚めて。
「……起きて…いつも怖くなって…っ」
また。
「い…いなくなっちゃ…ってるんじゃな…いか…って…」
「……そうか…」
肩を震わせている彼女の頭を撫でながら、一言だけ呟いた。
「すぅ…」
ソファに座っているネスティは、腕の中で眠っているトリスを見遣った。
知って、いた。
君があまり眠れていないこと。
そして。
おそらく僕に関することで眠れないってことも。
だけど。
『もう何処にも…行かないでね…?』
――…何処にも行かないさ。もう、二度と。
「…約束、するよ」
そっとトリスの頬に唇を落とす。
ずっと、君の傍にいるよ――…。
―――離れる、なんて出来ない。
君も、僕も。
初めて書いた小説。拙い文章ですいません!(今も変わってないけど!)
小さい頃はトリスはいつもネスにくっついていたと信じて疑ってない。そうに違いない。
ちょこちょこネスの後ろを歩くトリス………か、可愛い……!!
2人はラブラブしてるのが一番だ!シリアスも好きだけど。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
2007.05.08 修正・加筆
