どんなに有名な洋菓子店のケーキでも。
先輩のケーキには敵わない。

「………」
「……ん?」
金曜日。学校から帰っていた剣之助は、有名洋菓子店のショーウィンドウに張り付いている見覚えのある人物を見つけて足を止めた。
「……っぱり……かな…でも……」
(…?何やってるんだ?先輩)
う〜んと唸りながら、ぶつぶつと呟いている人物は紛れもなく剣之助の先輩、もとい恋人のヒトミだった。
(ケーキ食いたいのか?でも、先週も作ったはずだけど…)
太っていた頃からの甘い物好きは痩せた今でも健在で、彼女は週末はほとんどと言ってもいいくらい剣之助の手作りケーキを食べている。
ちなみに先週はフルーツタルトを美味しそうに頬張っていた。
…それはそうと、そろそろ声を掛けた方がいいかもしれない。…ガラスの向こうで店員が不審者を見る目になっている。
「……きっと下手だし……でも…」
「何が下手なんスか?」
「うへぇ!?!?」
(…うへぇって…。相変わらず色気のない驚き方…)
「け、剣之助!?!いつからそこに…」
いつの間にか後ろに剣之助が立っている。
「なんか先輩がぶつぶつ言ってる時からっスけど」
き、聞かれた…!?
ヒトミは眩暈がした。そんな大袈裟な…という声が聞こえそうだが、本当に眩暈がしたのだ。
今日、ここで聞かれてしまったらサプライズも何もない。どう言い訳をしようか頭を抱える。と。
「…で、何やってたんスか?」
「へ?」
「いや…さっきから…」
…あれ?
(もしかして…気付いてない?)
普通に考えれば、洋菓子店のショーウィンドウに張り付いてぶつぶつ言ってるだけなら、気付くも気付かないもない(ただ不審には思うが)
しかし、ヒトミは本気で安堵した。そのくらい慌てていたのだ。
「先輩?」
「え?えぇっと…ケ、ケーキ美味しそうだなぁって」
「……はぁ」
怪しい。怪し過ぎる。先輩は嘘が下手だ。それはもう格段に。
不審そうな剣之助の視線に気がつかないふりをして、剣之助の手を引いた。
「ほ、ほら!剣之助もう帰るんでしょ?私も一緒に帰ろうかな!」
「もういいんスか?」
剣之助の問いにうぐ…と口を噤(つぐ)んで。
「うん…いい!もう覚悟決めたから!!」
小さなガッツポーズを作る彼女にますます首を傾げる。
「…えーっと…先輩?大丈夫っスか?」
「え?あ、なんでもない!帰ろ!」
まだ少し様子がおかしかったが、彼女が手を繋いで歩き出したので剣之助はまぁいいか…と気に留めなかった。
翌日。ヒトミが剣之助の部屋を訪れた。
「剣之助、お誕生日おめでとう」
「…っス」
にっこりと笑う彼女に礼を言う。
今日は剣之助の誕生日だ。実はヒトミが「誕生日、剣之助さえ良ければお祝いしていい?」と剣之助に提案してくれたのだ。
なにより愛しい彼女からの、なにより嬉しい言葉。
どこに断る男がいるだろうか。
部屋に上がったヒトミは深呼吸を一つした。
「何か食べますか?先輩」
「ううん。えっと…剣之助」
「はい?」
ヒトミがずいっと出したのは白い箱だった。ケーキのワンホール用の箱だ。
蓋を開けると『Happy Birthday 剣之助』と書かれたチョコプレートが乗っているおいしそうなケーキ。
「これ…」
「えっと…買おうか迷ったんだけど…やっぱり剣之助の誕生日ケーキは私が作りたくて」
照れながら言う彼女。
あぁ、だから昨日洋菓子店の前で悩んでいたのか。
「あ!も、もちろん剣之助のケーキよりはおいしくないだろうけど…」
「……」
ケーキの上に乗る生クリームを一掬いして口に運ぶ。
先輩の香りが溶けたような、甘い味。
「おいしいっス」
「え?ホント?…よかっ…」
次の瞬間。
口の中に広がる甘い味。
「け……っ」
「…もっと食べます?」
そうして、しばし沈黙の時間。
どんなに腕がいい職人でも。
貴方の作ってくれたケーキには敵わないけれど。
本当に甘いのは。
貴方のその、甘い唇。
若おめでとう!…間に合わなかったけど!(土下座)
若にケーキをあげるのはホント勇気がいりますよね。なんたってケーキの腕プロ並みですから(笑)
なるべく『甘く』を目指したけど微妙だこれ!!(こんなんばっか)
そしてまだ若は未プレイっていう!本当イメージで書いてるので若っぽくなかったらすいません!!(はよしろ)
ここまで読んで下さってありがとうございました。
2007.07.05
