そうやって。
私は貴方の優しさに縋(すが)りつく。

時々。本当に時々、だけど。
泣いてしまいそうになる。
でも、何が悲しいのか分からないから、泣けなくて。
(……結局は悲しくなんか、ないんじゃないかな)
歩きながら心の中で呟く。
ひどい人間だなぁ、なんて自嘲しながら。
『怨霊を封印する』
それが私の使命だけれど。
ふとした瞬間、気付いてしまった。
あぁ、怨霊とは元は人なのだ、と。
それならば。私がしていることは。
ただの。
「神子殿」
急に呼ばれて、現実世界に引き戻された。
この人が自分から話しかけるなんて珍しいな、なんて思いながら数歩後ろを歩いている人を見遣る。
「…頼久さん」
今まで話していたのに急に黙って不思議に思ったのだろう。頼久さんが心配そうに聞いた。
「どうかなさいましたか?」
「いいえ?」
にっこりと笑うと、頼久さんは複雑そうに私を見て。
「……逃げたい、ですか?…『龍神の神子』から」
小さく、問うた。
頼久さんの予想外の言葉に少し驚いて。
「……いいえ」
それでも静かに首を振る。
「私が。…『龍神の神子』がやらないと、誰が怨霊から京を守るんですか?」
これが私の使命なのだ。
(人に)
認められて。
(怨霊に)
恨まれる。
「…大丈夫ですよ」
だってそうでしょう?
私は怨霊を封印する為に喚ばれたの。
「それが、京に喚ばれた理由なんですから」
そうでもしなければ、私が喚ばれた理由がなくなってしまう。
私の、京での存在が。意味が。
からっぽになって。
「…神子殿」
「はい?」
俯いて聞いていた頼久さんが顔を上げた。
「…それが神子殿が選んだ道ならば、私は全力で神子殿をお助けする所存です」
「はい」
「ですが…」
私の手を優しく手にとって。
「もし。…もしも、いつか。全てを投げ捨てて逃げたくなられましたら」
ぎゅっと微かに握る。
「どうか、この頼久もお連れ下さい」
微かに笑って。でも強く、そう言った。
(……涙が、出そう)
この人は京を捨ててもいい、と。
私が辛くて、辛くて、逃げたいのなら逃げても構わない、と。
貴方にとっても、とても大切な場所なのに。
一緒に逃げてくれる、と。
「……ありがとう、頼久さん。…でも」
頼久さんの手を小さく握り返して。
「私は逃げません」
始まりはなんであれ、京を守ると誓った気持ちも本物。
それに偽りはないから。
「神子ど「でも」
頼久さんの言葉を遮る。
「…いつか…、………いつか、もし、私がそう思ったなら」
そう、思ってしまったなら。
そう、思ってしまっても。
「……傍に、いてくれますか?」
貴方、だけは。
頼久さんは返事をする代わりに、優しく微笑んでくれた。
―――あぁ。
貴方がいてくれるから、立っていたれる。頑張れる。
私は確かに、『ここ』にいると。
「…ありがとうございます」
ちゃんと笑ったつもりだったけれど、頼久さんが少し悲しそうに笑っていたから。
もしかして、少し泣きそうな顔だったのかもしれないなぁ、なんて思った。
いきなり遙か!いきなり頼久!(どーん)
頼あかは遙かの中で一番好きなCPです。主従っていうのがもう…!!
あかねの傍には常に頼久がいるのがいいですよね!陰ながら…っていうか、結構堂々と見守ってればいい!
怨霊を封印するのは怨霊を救う事にもなるけど、やっぱり元は人だからあかねは少なからず苦しんでいると思います。
でもあかねの性格からして色々自分で悩んだりするんじゃないかな〜と。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
2007.06.17
